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 照明の煩いホテルの一室で,小春はジャケットを脱ぎ捨てた。  ベッドに座り込んだままぼんやりと,反芻していた。  美しい世界。  鈴の音のような小春の声が耳に残っていた。  細身のジーンズのポケットに手を突っ込み,小春がコンドームをサイドテーブルに置く。  ラグランシャツを脱ぎ捨てた小春の躱は細いというよりは薄く,陶器のように肌目が細かくて艶やかだった。  勢いよく小春が膝にのって来た。  騎乗位を思わせる態勢。  赤い唇が,再び,重なろうとする。  「…何で動じないの」  ミリ単位に迫った唇が詰まらなそうに呟いた。  「美しい世界を見せてくれるんじゃないのか」  「そういう世界がみたい訳?」  お前のいう美しい世界がどんなものかなど知らないのだ。  取り敢えず付き従うしかないというのに,  「狂言か」  急に覚めた気持ちになって,小春の躱を押しのける。  「くだらないな」  ベッドから立ち上がり,鞄をとる。  「くふふふふっ」  フローリングから,奇妙な声が沸いた。   「ふっ,くふんっ,あははははっ!はははははっ!ふはっ,はぁん」  ごろごろと床中転げ回りながら,小動物が悶絶していた。  「あぁんっ!やだっ!あははっ!はぁっ!」  息も絶え絶えになりながら,それでも笑うのを止めない。  ほとほと呆れ果てて,部屋のドアノブに手を掛けた。  「あはっ,あ,待って,待って」  バネを内臓された玩具のように跳び起き,縋り付く。  「ホントはこっち」  コンドームをちらつかせて見つめた顔に,怪訝を顔中であらわにした。
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