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放課後も,相変わらず長閑な陽光が降り注いでいた。
「ここが図書室。本が読みたければここに来るといいよ」
委員長をやるのも楽じゃない。
営業スマイルのまま,図書室の引き戸を開いた。
「謝謝」
明るく透る声で彼は謝辞を述べ,書棚の古書に指を這わせた。
矢鱈と,艶かしい指遣いで,陽の当たる背表紙をなでる。
その心地よさを知っているかのように,古書は身じろぎもせず,彼の指の成すがままになっていた。
妖艶さと,淫靡さを持っている。
たった15年の生涯では得られない艶かしさを彼の所作は得ていた。
「漂亮」
思考を読まれたのかと思った。
「正門で呟いたろ?小神」
嚥下する音がやけに響いた。
細いしなのある躱がこちらを振り向く。
「ピャァオリャン」
舌先で転がすように発音する。
「それってぼくのこと?」
くひくひと喉を鳴らす。
変な笑い方だ。
「ピァォピァォリャンリャンア」
歌うように笑い,彼は古書にしたように僕の胸を撫でた。
小春は男だ。
それをものともしない美しさが,僕を挑発していた。
「小神,きみを気に入った」
相変わらず餓えた目がくひくひと笑っていた。
「ちょっと、ぼくと遊ぼうよ」
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