紅茶をふたつ。

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「……や… 何か自分で普段通りとか言ってたけど… 最後くらいはやっぱり贅沢して 綺麗なもの見て、旨いもの食って、のんびりしたいなぁ…って 慌ただしい毎日だけど、最後の時くらいは……その……… 邪魔されないで……あの…過ごしたいなぁ…って……」 さっきよりも顔を真っ赤にしながら呟いたコウ 段々と声が小さくなっていくから最後の方は聞き取るので精一杯だった 「…そっか いいんじゃん? やっぱ普段のんびりできないからな 俺も一週間あるなら家族と仲のいい友達誘って旅行に行きたいな 観光…ってこともないから緑の多い場所に行きたい …何か……穏やかな気持ちで受け入れられる気がする」 俺が話終えてからコウはずっと黙って俯いたままで、居心地の悪い沈黙が流れる 「……って言ってもあくまでも"例えば"の話だから、そんなに真剣に考えたってしょうがねぇよな? …あ、 俺紅茶いれてくる コウも飲むだろ?」 沈黙に居たたまれなくなった俺は 何とか空気を変えようと無理矢理話を変えた 二人分のマグカップを持ってキッチンへ行き、お湯が沸くのを待っていれば 突然服の裾を引っ張られた 振り返れば、俯いたまま俺のシャツを握りしめているコウ 「ちょっと待ってろ? もうすこ…… 「トワは!! …ットワは……… 最後の日……俺と過ごしてくれないの………?」 話を遮って発せられたコウの言葉 あまりにもビックリし過ぎて瞬きするのを忘れてしまっていたくらい… コウの言動の意味がよく分からない 「…え? 何…いきなり…」 「……ッ俺はね? もし地球が終わっちゃうなら、本当はずっと… ずっとトワと一緒に居たい……… だけど、やっぱりもう会えなくなっちゃうなら… 今までお世話になった人達に…少しでも感謝を伝えられたらって…… でも…… 本当に最後に…… 抱きしめていてほしいのは そばにいたいのは…… トワだけだから」 「……っえ? あのさ……それってどういう……… 「ッだから!! もし地球が終わっちゃうんなら 俺はトワと最後まで一緒に居たいって言ってんの!!」 .
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