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…意気込んで出発したのはいいんだけど……
道は舗装されてないわ、車の振動は凄いわで…
運転してる俺でも酔いそう……;
「コウ?大丈夫?
具合悪くなったら言って?」
静かになってしまったコウを気遣い、助手席に視線を向ければ
開かない窓に張り付いて子供みたいに外の景色を眺めていた
「…コウ……?」
「……ッあ…ごめん!!
あんまりにも景色が綺麗で…
なんか落ち着くよね、ここ」
振り返ったコウは満面の笑みではしゃいでいた
「……そうだな
なんか落ち着く…
空気も綺麗だし」
普段、仕事なら狭いスタジオやたくさんのビルが建ち並ぶ都会で行うことが多いから
こんなに緑があって太陽の光を浴びながら仕事が出来るのは本当に幸せなことだ
抜けるような青空に、降り注ぐ太陽
気持ちまで開放的になっていく
「道はデコボコ~♪
車はオンボロ~♪
だけど気持ちはウキウキ~♪」
「!?」
助手席に座って窓を眺めていたコウが突然歌いだした
「…ど…
どしたの?コウ……」
「ん~?
なんか、仕事だって分かってんだけど
トワと二人きりでこうやってドライブ出来てるって思ったらなんか楽しくなっちゃって…
気付いたら、歌ってた」
楽しそうに笑いながら、ふと言ったコウの言葉
まるで一枚の写真のようにその姿が目に焼き付いた
「……俺も」
こうして二人でゆっくりドライブなんて普段は仕事に追われて出来ないことはお互いよく分かってる
例え仕事でも、やっと出来たこの時間を大切にしたいと心から思った
「車はオンボロ~♪
道はデコボコ~♪
…続きは、何だっけ?」
「……
ふふっ…
だけど気持ちウキウキ~♪
だよ?」
コウの作った歌を口ずさみながら、二人でドライブ
「…また、来ような?
今度は…二人きりで」
爽やかな空気の中、二人きりの時間がいつまでも続けばいいと願いながら俺は車を走らせた
Fin.
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