紅茶をふたつ。

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ある晴れた昼下がり 俺を除いた4人はラジオの仕事で朝から出掛けていた 残された俺はというと、朝ゆっくり起きて 溜まっていた作りかけの曲を仕上げたりして 一人きりのオフを満喫していた 機材のある部屋に篭って作業をしていると、ふいにドアをノックする音がした 「ただいまー トワ?飯食った?」 「…あれ?コウ 仕事じゃなかったの?」 掛けられた声に振り返れば そこには朝送り出した愛しい人の姿 「会いた過ぎて幻見てんのかな?」 「…バカ…… 終わって帰ってきたんだよ どうせ何にも食ってないだろうと思ってケーキ買ってきたんだけど…食う?」 ふと時計に目をやれば15時過ぎ そりゃ仕事も終わってるよな… 集中しすぎて時間を気にしていなかったせいで昼食を食べ損ねてしまった 「…ん 腹減ったし、食おうかな」 実感すれば腹が減る訳で コウに笑われながらリビングへ向かう 「…なぁ、ケーキだし紅茶でいい?」 「うん、ありがと」 キッチンに立ってお茶の準備をしてくれているコウを ソファーに座って眺めていた 手伝いに行きたい気持ちはあるんだけど… コウが自分から進んでお茶をいれてくれるなんて滅多にないから 缶の側面に書いてあるいれかたを見ながら四苦八苦している姿が何とも可愛くて 慣れないながらも俺のためにやってくれようとする姿に自分が愛されていると実感する 「…なぁ~にニヤニヤしてんだよ… ほら、出来たから食おうぜ?」 コウが用意してくれた紅茶とケーキを味わいながら腹におさめる 他愛もない会話をしながら二人きりで過ごす時間は何よりの贅沢 話の途中で不意にケーキを食べていたコウの手が止まった .
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