また沖田夢(別モノですよ)

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「…今日は星が綺麗ですよね」 とん、と壁に凭れてアイツは言う。 「…あァ」 近づく勇気も無い俺は、一定の距離を取ることでそれを許した。 どれくらいの間無言のままいただろう やがて、おずおずと口が開いたのはアイツ。 「……ほ、星を見てたら、貴方を思い出して、…うん。もうすぐ、思い出せそうな気がするんです」 「…え?」 顔を上げたら、真っ直ぐ見つめる目と目が合った。 「……私は貴方を知りたい。絶対、貴方は私が忘れちゃいけない人だったと思うんです」 もうすぐそこまで来てるのに、と悔しげだが確かに目の前で笑った。 そこにあったのは、いつも通りの。 「…馬鹿みてェ」 「………ですよね……」 「違ェ。馬鹿みてェなのは」 笑ってる大事なアンタを手放しそうになったことだ。 迷わず手を引き、力一杯抱き締めた。 「…絶対、思い出させてやりやすから」 「………はい!」 ころころとようやく嬉しそうな笑顔を見せた彼女にキスをした。 時刻は12時ジャスト。 織姫と彦星が離ればなれになった時間。 …ざまーみろィ。 俺ァ彦星みてーに手放したりしねェぜ、神様。 そんなことを考えていたら、眠りから醒めたような声。 「………そ、うご?」 「…?」 …ん? とうとう耳が悪くなっちまったか? 「え?ちょ、どしたの総悟」 今の、 総悟って? 俺の名前? ……俺を、知ってる? 「…俺のこと、思い出したんかィ?」 「は?さっきから何言ってんの?総悟」 先程までのしおらしさは無く、いつも通りの話し方。 しかもどうやら記憶喪失の間の記憶は無いらしい。 「…ッバカヤローめ!!」 「ったァ!?何すんのよ馬鹿!!」 思わず奴の頬を思いっきりつねった。 …記憶が戻ってくれて嬉しい。 …嬉しいけども! 初キスくらい覚えて欲しかったという俺は我が儘なんだろうか。 …でも、 「…おかえり」 「え?……ただいま?」 「…やっぱこっちのお前が一番好きだ」 「…ちょ、どしたのマジで」 顔を真っ赤にしてテンパる彼女を久しぶりに見て、やっと誕生日を迎えた気がした。 無駄に長い…orz
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