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茶の間に連れて行かれ、目の前にお茶を置かれた。顔を上げると男と目が合う。
「改めて初めまして、要さん。私が雨宮 慶です。」
「あの……あなたは何で俺の記憶を……?」
俺の質問に雨宮さんが目を細める。少し間があって、雨宮さんが言った。
「あなたに……会って欲しい人がいるんです。けど、あの人に会う前に記憶を取り戻して欲しいんです。」
「あの人?」
尋ねたが、雨宮さんはまだ教えられないと言った。そして、紙を一枚渡された。中には住所が書かれてある。
「これは?」
「要さんの記憶に関わる人がいます。記憶は私が直接教えても意味がありません。だから、直接触れて思い出して欲しいんです。」
期待半分、不安半分。
複雑だった。俺は本当に記憶を取り戻したいのだろうか。本能はそれを拒んでいるような気がする。
気のせいなのだろうか。
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