一章

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前川が去ってからほどなく、薄暗くなった部室に灯りが点いた。 氷見子が点けたのだ。 「たけちゃん、もう帰らんか?」 武ノ内は、羽田や前川の鑑定結果を反芻していた。 あれで良かったのか あの言い方で伝わったのか 未来を正確にトレース出来たのか 「ああ、そうだね… そろそろ帰るか」 思考している武ノ内の横顔は、三割増しのカッコ良さになると、氷見子は思っている。 言ったところで真剣にとりあってはもらえないから、本人には伝えていないが。 「氷見子様、帰りに恭平のバイト先寄っていい?」 横顔を氷見子に見せたまま、武ノ内が聞いた。 「構わんよ」 蓮の花のような笑顔を、氷見子は浮かべた。
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