一章

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松末高校は首都圏に建つ。とはいえ、高校の周囲にあるのは住宅街と、所々に畑や草地。勉強するには良い環境である。 男女あわせて八百名ほど。校則はあまり厳しくはない。 羽田恭平は松高の二年生である。 現在は帰宅部のため、放課後はほぼ毎日バイト。勿論今日もその予定である。 ただ… 行く前に立ち寄る場所があった。 会いたくなった奴がいた。 「あれ? 恭平!? 珍しいな」 奴がニカッと笑う。 この笑顔に、いつも恭平は救われる。 些末な悩みなど、馬鹿らしいと思えるからだ。 「ちょっと、武ノ内に聞きたいことがあってさ」 「より一層珍しいな、ま、座れよ」 奴、の名は武ノ内修生。占い研の会長である。 同好会でありながら、生徒会室の隣に、一室を持つ占い研。 武ノ内の占いは、当たると評判である。 「まさか恭平、占い希望?」 武ノ内は笑顔のまま、紙コップに健康茶を注ぐ。 「あー、その、なんというか、夢の解釈を知りたいと思って」
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