一章

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「今の羽田でしょ? 何? 恋の悩み?」 武ノ内の背後から、唐突な声。 うわぁと彼は飛び退いた。 生徒会書記長の高取氷見子が、思い切り興味本位といった風情でそこにいた。 「気配消すのはやめてくれ~マジ心臓に悪い」 「たけちゃんが変に黄昏てるからさ」 氷見子には何ら、悪びれる風はない。 「それに羽田恭平と言えば、ウチの高校の三大モテ男クン。 そらまー気になるわな」 あ、でも と氷見子は付け加える。 「わしは個人的には、たけちゃんの方が良いと思うが」 そらどーも、と武ノ内は苦笑する。 時期生徒会長と目される氷見子は、黙っていれば美少女だ。 小柄ながら、すらりと長い手足。くるりと上向きの睫毛。 しかし言葉使いは何処かのオヤジである。一人称は『わし』だし 「わしゃ以前から、たけちゃんを美形と認めておるぞ」 「ガキん頃の話でしょ? 三歳までは可愛かったって、親にも言われるよ」 そんなことより恭平だ 「あいつ、恭平って今、誰と付き合ってるか、氷見子様知ってる?」 「さあな、先月はイッコ上のおなごと一緒にいたが」 恭平本人には、はっきりとは言えなかった占。 夢に出てくる霧に、吉の意味はない。 ましてや 黒い霧など
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