一章

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前川玲那は、武ノ内や羽田恭平よりイッコ上の三年生。恭平が一年の時に所属していたサッカー部のマネージャーである。 「ずっと…好きだったの」入部してきた恭平を一目で好きになったと前川は語った。 「羽田が部活やめちゃって、あんまし会えなくなって淋しかったけど、春の体育祭の打ち上げで合流して、…それから付き合うようになって」 武ノ内はカードを取出し、シャッフルした。 数多の種類があるように見える占いだが、実際は三種類しかない。 それが 命 卜 相 である。 命とは生年月日から読み取れる一生の運勢。 卜とは、その時々のイエスノーをはっきりさせるもの。 相とは形。手相や人相でその個性を解析する。 前川の鑑定依頼は「やり直したい」という内容。武ノ内は卜の方法を選んだ。 机上に並んだタロットカード。 過去を示すカードは悪魔。 「お酒の勢いで、寝てしまったかな。所詮一夜限りの関係だったみたいだね」 前川はまた涙を溢す。 現在のカードは世界の逆位置。 「今愛されてる実感は、ないんでしょ?」 前川は無言で頷いた。 未来のカードは月の逆位置。 「結論を言うと、復活は無理みたいだ。…残念だけど」 前川はわっと机に突っ伏した。
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