夜風の日常 -(Not) always-

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「お兄ちゃ~ん? 遅刻しちゃうよ~!」  未だに歯ブラシで口の中を泡だらけにする俺に、玄関から怒鳴り声が届く。  おお、本当だ。時計は既に8時を回っている。 「ああ、今行く!」  急いで学校の支度をする。と言っても教科書ノート類は全て学校のロッカーにぶち込んである。  俺は基本的に家庭学習はしない主義なんだ。その代わりに授業中集中してるけどな。  ぺらっぺらの学校指定カバンを引っ提げ、家を飛び出す。これが毎日の日課にもなりつつあった。  俺の通っている高校──私立中禅寺高校は、家からそう遠くないところにある。歩いて30分、自転車なら20分もかからない。  現時刻8時15分。こりゃ徒歩じゃ無理っぽいな。自転車で行くか。 家の裏に回り、決して新しいとは言えないママチャリを取り出す。普段両親、特に母親がよく使っているから空気とかは大丈夫そうだ。 「お兄ちゃん! 早くー!」  玄関先でまたもや怒鳴り声が上がる。もうお気づきだろうが、俺には兄妹がいる。妹だ。  妹も同じ高校に通っている。俺が二年で、妹は一年。  気にせず早く行きゃいいものを、なんでか律儀に待ち続けているわけだ。
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