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「彼女のためなら、私は何でもする。たとえ命を失うことになっても…」
「オイオイ物騒だな。そんなんじゃ親が心配するだろ」
「平気よ」
何が平気だ。そう聞こうとした俺を遮り、月宮は続ける。
「私の親、この世にはもういないから」
「え…?」
沈黙が訪れる。
俺はもしかして聞いちゃ不味いことに触れてしまったのではないだろうか。
気まずい…。
「す、すまん」
「謝らなくてもいいわ。気にしてないから」
そう言う月宮の表情は、陰りが差したように暗い。
誤魔化すように、月宮は笑った。
「さ、そろそろ戻りましょ。あんまり長居し過ぎると、私まで咎められちゃうし。ああ、安心して。放課後には彼女起きてるだろうから、詳しくはそっちで色々聞けるわ。じゃあ、資料室でね」
捲し立てるように言い残すと、月宮はパタパタと教室へ戻っていった。
一人残された俺の胸には何かもやもやする気持ちが残った。
それに顔をしかめつつも、とりあえず今は教室へ戻ろうと、屋上を後にした。
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