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俺のただならぬ殺気を感じ取ったのか、アリアは小さく咳払いをすると、真剣な面持ちで言った。
「月宮から既に話は聞いている。なぜ私が体を共有するに至ったか、私をここまで追い込んだとは一体どのような奴なのか、だったか? …知りたがりだな、君は」
当たり前だ。と俺は一人ごちる。
どうして不死に近い吸血鬼が、人の手を借りてまで生き延びねばならなかったのか。
いくら当たり所が悪いとはいえ、吸血鬼を死の淵まで追いやることの出来る化け物みたいな奴の正体はなんなのか。
まぁその他にも疑問はいくつかあったが、最大の疑問はこの二つに集中していた。
「まずはバレンタインのことからだ。奴は世界的にも稀有な存在である吸血鬼ハンターの一員だ。私が知る中で、最強のな。その強大な力を持ってして、我が同胞をフランベルジュによって屠ってきた」
フランベルジュ? なんだそりゃ。
「刃が炎の如く波打つ大剣だ。奴はそれを片手で軽々と振るい、肉を裂き、骨を断つことから、血のバレンタインの異名をとるようになった。そして、今回命を狙われることになったのが──」
アリア・ルナルーチェ、つまりお前ということか。
なんというか、もう言葉も出ねぇよ。
いつの間に世界はそんな化け物が闊歩するようになっちまったんだか。
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