吸血鬼 -Vampire-

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「おい、じゃあそれって…」 「そう。私は人間に戻る術を失った。…いや、今思えば奴は初めから、私を人に戻すつもりはなかったのかもしれないな。途方に暮れた私は、何度も命を断とうとした。しかし、今日まで死ぬことは出来なかった」  まぁそりゃ吸血鬼だしな。不死に近い体じゃそう簡単には死ねんだろう。  ましてや自殺となると、何度も繰り返してたら先に精神がやられちまうかもしれんし。  …ん? ちょっと待てよ? 「なぁ、だったらなんで月宮に助けを求めたりしたんだ? 言い方は悪いけどよ、ハンターにやられたときそのままほっとけば、お前は死ねたんじゃないか?」 「それでは駄目だ」  なんだってんだよ、全く…。 「死と再生を繰り返している内に、私は奴への憤怒の情が沸き上がり、復讐を決意した。生きていようかいまいが関係ない。奴の命をこの手で奪うまで、私は死ねないんだ」 「………」  俺は何も言えなかった。  アリアがそんな重いものを背負ってるなんて考えもしておらず、かける言葉が見付からない。  なんとかしてやりたいと思った。  でも、俺に何ができる?  吸血鬼の経験、生きた年月。それら埋めることのできないものが、俺とアリアの間にそびえ立っている気がした。
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