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「ほい、イチゴ」
「わぁ、ありがとー」
俺からクレープを受け取った綾川は、すぐさまそれにかぶり付いた。
少し咀嚼すると、思い切り顔を綻ばせる。
…まぁ、この笑顔が見れただけよしとするか。
現在俺たちがいるのは、ゲーセンの一角にある休憩コーナーみたいなところだ。
自販機にガチャポン。今流行りのカードを使ったゲーム機なども置いてある。
ま、俺はやらんがね。
もう一口綾川がクレープを食べ、ふにゃっとした笑顔を作ってるのを見ながら俺もクレープを食べようとする。
が、なんと綾川がいきなりこれをひったくって、しかも一口ぱくりと食いやがった。
「ちょっ…何してんの!?」
「ん? 食べ比べ。う~ん、こっちも美味しいなぁ」
食べ比べって…。いいから口ん周りのチョコ拭けよ。全く。
で、何だ。食べ掛けのクレープこっちに寄越して。持ってろってか?
「違うよ。夜風も食べる?」
ああ、そういうことね。
「そんなら遠慮なく」
俺の金で買ったもんだ。少しくらいもらったっていいだろう。
イチゴクレープにかぶり付く。口の中にイチゴジャムの酸味と、クリームの甘味が広がった。
しかも驚いたことに、このクレープ本物のイチゴ果肉を使っている。あんなに値が張ったのはそのせいか。
なるほど、確かに美味い。
…って綾川? お前顔真っ赤になってるけど大丈夫か?
「う、うん…。平気…」
「そうか? ならいいけどよ」
その後綾川の口数が減ったのは何故なんだろう。女って奴はつくづく判らん。
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