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ふと、俺は前方に人影を発見した。街灯の真下で、機械的な光に照らされている。
目を細め焦点を合わせる。
ブロンドの長髪、背負ったバカでかいギターケース。忘れるわけもない。ついさっき会ったばかりなのだから。
「シンシアさん!」
思わず駆け出す。今は少しでも早く、この孤独な暗闇から抜け出したかった。
しかし、その行動こそ間違いだったとすぐに気付かされる。
シンシアの体がブレた。
「──え?」
次の瞬間、俺は自分の腕が消し飛び、その切り口から赤い液体が噴出してることを知った。
肘から先が、無い!?
ぐっ……
「ぁああぁぁあああああああああああああああ!!!!」
痛みが爆発する。喉が潰れるくらい、俺は絶叫した。
膝から力が抜け、その場へと崩れ落ちる。あまりの激痛に、ショックで意識が飛びそうだった。
一体何が起きた。
無様にも地面に這いつくばったまま、件のシンシアをなんとか見る。
彼女は笑っていた。右手にあるのは、刀身が波打つ、俺の身長もあろうかという銀の大剣だ。
名前は……そう、フランベルジュ。
と言うことは、まさか、そんな、こいつが──!?
「ふ、くく……クハハハ」
下を向いているため、シンシアの表情は読めない。
だがその代わり、彼女の口は引き裂かれんばかりに開いていた。
狂笑。その一言がぴったりだった。
やがて顔を上げたシンシアは、歪んだ笑みのまま、こう言い放った。
「見──つけたァ!」
地獄が、始まった。
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