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『見つけた』
その一言で、俺は全てを理解した。してしまった。
こいつは吸血鬼ハンターだ。しかも、最強の。
血のバレンタイン。
500年を生き、純血の吸血鬼と大差がなくなったアリアでさえも追い詰めた怪物。
そんな奴が目の前にいた。
「まさかあなたも吸血鬼だったなんてね~。この町には一匹しかいないと思ってたのに。お姉さん騙されちゃったわ☆」
わざとらしく舌を出すシンシア。明らかに数時間前とキャラが違う。何だこの変貌ぶりは。
いやそれよりも俺の右腕だ。ヤバい、このままじゃ出血多量で死んでしまう。
止血しないと!──って、あれ、ある……? 再生している!?
気が付けば、右腕が元通りになっていた。試しに手を握って開く。ちゃんと動いた。どうやら神経も繋がっているようだ。
そう言えばぶっ飛んだ腕がどこかに消えている。じゃあこの腕は新しく生えた、ということになるのか。
これが吸血鬼の力、不死。いくら傷付けようが、生命力が尽きるまで体は再生し続けるという、驚異的な治癒能力。
しかし残念ながら、制服までは再生してくれなかった。肘の辺りでバッサリやられてる。
だがそれにしても、まさかこんな早くに実感することになろうとは…。
「シンシアさん、どうして……?」
よろよろと立ち上がる。
そして言ってから後悔した。なんて愚かな問いだ。決まってるじゃないか。吸血鬼ハンターがこんなことをする理由はただ一つだ。
「当たり前じゃない──」
シンシアは邪悪に顔を歪め、
「あなたが吸血鬼だからよ」
無慈悲にも、予想通りの言葉を言い放った。
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