三章-涙、温もり-

2/3
前へ
/11ページ
次へ
僕は急いで駅を出て自転車に乗る。 電車は時速何kmを出してるかわからない。 でも僕は必死にペダルをこいで自転車を走り出す。 線路沿いの下り坂を下っていく。 君に追い付くように、風よりも早く飛ばしていく。 錆び付いた車輪が悲鳴を上げている。 もう壊れるんじゃないか。 そう思っていると電車と並んだ。 君を必死に探すけど見当たらない。 電車はゆっくりと僕から離れていく。 その時、電車が発車した時を思い出した。 あの約束した時…あの時、ドアの向こう側で泣いてたんだろう? 寂しいのは僕だけじゃなかった。 あの時、やっと僕は気付いたんだ。 顔見なくてもわかってたよ。 君が泣いてた事ぐらい。 だって、声が震えたから。 あの約束が頭の中で蘇る。 『約束だよ。必ず、いつの日かまた会おう。』 「必ず…いつの日か必ず…」 その約束を確かめるように何度も呟き、涙を零しながら、猛スピードで離れていく君に見えるように大きく手を振った。 あの時、僕が手を振っていた事を君が気付いてたかは知らないけど、僕は精一杯振った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加