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「約束だよ……?」
幼い頃の懐かしきあの日。何時までも一緒にいられると思っていた。
……あの日までは。
「うん、約束だ……」
泣きそうな彼女の為に精一杯優しい声を出す。
彼女は堪えきれなかったのか、俺の胸に飛び込み、大声で泣き出した。
夕焼けの紅い日が浮かぶ時、俺は優しく抱きしめ続けた。別れを惜しむように。暫く触れられない温もりを閉じ込めるように……。
やがて泣き止んだ彼女は、俺から離れてもう一度言った。
「……約束だよ……?」
目の端に若干涙を浮かべながら、彼女は言った。俺の方が身長は高いから、自然と上目遣いとなる。……幼い頃でもそれは十分魅力的で、顔が赤くなった記憶がある。
そんなことより俺は、彼女の目の端に光る涙を人差し指で優しく拭いながら、微笑みながら彼女に答える。
「約束だ……。いつかきっと…………」
そこで景色は擦れ、声も聞こえなくなった。
だが、構わない。その言葉は、今も覚えている。一字一句違えずに。
それはこんな風に続く。
いつかきっとまた会おうね。そして……
今度こそ、ずっと一緒に居よう。
って。
これは、きっとよくある幼い頃の約束。でも俺は本気だったと思う。今だって…………。
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