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そうなれば今更止まるのは不自然。結衣のことが好きなシンスがそんな不審な行動を見逃すはずが無い。
そのことを自覚してはいないのだろうが、決心がついたのかシンスに向かって自分で一歩を踏み出す。
心中で何度も首を縦に振り、表面上では堪えきれないニヤニヤが浮かぶ。しかし今は抑える必要はさほど無いのだろう。
何故なら、シンスの視界は全て結衣が引き受けてくれているのだから。
「えっと……、お、お疲れ様」
言いつつシンスの頭に手を乗せる結衣。シンスの髪を撫でるようにゆっくり手が動く。
やっている方もやられている方も、顔が赤くなっていて面白い。
「……楽しそうだな」
「勿論だ。純情な奴らの恋路は見ていて楽しい」
「……はあ」
少しは自分の恋路に興味を持たないのか、と言うミスティの呟きはシャットアウトされ、意識は完全にシンス達のほうにのみ向いている。
「後、三人?頑張って……!」
「あ、ああ……。頑張る」
笑みが深くなるのを止められないでいると、ミスティがいい加減にしろ、と背中を叩く。結構強く叩かれて体勢を崩す。
これは予想外だが、転んでもただでは起きない。それを利用する。
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