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「とっ!ミスティ、強く叩きすぎだ」
小芝居を打ちつつ、体を少し前へ。狭い控え室ではそれだけでほとんどの敷地を移動できる。……他との大きさの違いに吃驚しているのは俺だけではないはず。
とにかく、そのまま結衣の背を押す。その前にはシンス。
「あ、悪い」
結衣の背に隠れながら笑みを浮かべる。結衣の背中は少しずつ遠ざかり、やがて止まる。シンスが流石の反射神経を見せたのではなく、顔面で結衣を受け止めたからである。
そして、座っているシンスに頭を撫でていた結衣。当然、肩辺りがシンスの頭部にあったわけで、肩の少し下。それも体の正中線の位置をシンスは顔面で受け止めたのだ。
勿論、女性特有の膨らみ(大小の差はあれ)を、何度も言うがシンスは顔面で受け止めた。
何が起きたのか理解できていない結衣に、あまりの事態に硬直するシンス。背後で笑みを浮かべる俺と溜息を吐くミスティ。中々のカオスが形成されていると思う。
『シンス、休憩はいい加減良いかの?』
「はいいぃっ!」
完全に声を裏返らせ、結衣の肩に遠慮気味に触れ、自身から引き剥がすと逃げるようにステージに上がっていった。
ヴィー爺、空気を読んでくれよ、と言う嘆息を漏らし、仕方ないからと結衣に語りかける。
「シンスに胸に頭を埋められて、どうだった?」
途端に顔を真っ赤にする結衣を見て笑い、いい加減に弄るのは止めてあげようとステージ上を見る。
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