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今度はどんな奴かな、と少し楽しみにしながら一年生に目を向ける。
眼鏡を掛けた知的な青年、といった風貌。中指で眼鏡のブリッジを押し上げ、淡々とシンスを観察している。
「私は魔法主体なので、魔法での勝負を望みます」
「……なんか、やりずらい」
何故かテンションがガタ落ちのシンス。眼鏡に何か嫌な思い出でもあるのだろうか?それともあの紳士然とした態度が気に食わないのだろうか?
はあ、と溜息を吐いて、死んだ魚の様な目を、戦闘意欲に溢れギラギラと殺気だった目に変えるシンス。器用な奴め。
『それでは、始め!』
「『刃切嵐過』!」
「上級!?『地神の安らぎ』!」
一瞬慌て、練った魔力を多少霧散させながらも、しっかりと魔法を発動させたのは流石か。
土属性の内で最も堅固な防御魔法。たかだか上級に負けるはずもなく、シンスを守りきって健在している。
ちなみにこの魔法は最近の修行中に覚えたもの。試験が無かったのはこの魔法しか習っていないから。
「……流石ですね。まさか最上級とは」
「いやいや、まさかその歳で上級を放ってくる奴がいるとは思わなかった」
「よく言いますね。先輩方も出来たでしょう?」
「ま、一応な」
一端の攻防を終え、会話をしながら隙を探す両者。一年とは思えないほどに隙が少ない。
本来のスタイルで攻めれば瞬く間に勝てるシンスだが、魔法でとなると途端に打てる手段が限られてくる。
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