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(厄介なのは一年離れした魔法の腕だな。挨拶代わりに上級とは。見栄っ張りか、余裕があるのか……)
シンスは考えを巡らせる。考えても何の情報もないため、結論に至ることはない。
それならいっそ、と何も考えずに攻めることだけを考える。魔力もまだ十分に残っているし、別に魔力を使い切っても構わない。
そうと決まれば、魔力を練る。そして呟くように魔法を唱える。
「『逆さ花火』」
上空から地上へ。幾つもの花火が落ちてくる。その一つ一つが爆発する、そんな魔法。
「『流吹包界』(りゅうすいほうかい)!」
風が一年生を包み、花火を吹き飛ばす。が、あれは失敗だ。
元々風と言う属性は防御に向いていない。風属性の防御の概念は吹き飛ばすだけ。それではこの魔法のように突破力のある魔法は防げない。
故に、基本的にはそれを纏いつつ高速で退避するのが常套。
しかしそんな余裕はなかったのか、防御魔法を展開してその場に伏せる。
花火が止んだ頃、一年生が顔を上げると視界に移りこんだのは花火が巻き上げた砂塵だけ。しかしこの認識は過ちである。
実際のところは、シンスの策。花火の影響と見せかけ砂塵を操り視界を奪う。その隙に意識を刈り取る。
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