本戦 闘争と血

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シンスの十八番、炎の帯が腕に巻きつく。対抗するように一年生も足に風を纏って移動速度を向上させる。 シンスが駆け出す。一年生が滑るように移動する。一年生にしては破格の速度だ。だが、所詮はまだ学園で揉まれていない一年生。速度についてこれていないと思っているのか、一直線にシンスに向かっていく。 足を振り上げる一年生の懐までもぐりこみ、シンスが拳を打ち上げる。炎の属性強化が威力を倍増させ、爆風が一年生を更に上空へと打ち上げる。 一年生が軽い火傷程度で済んでいるのは、身体強化の錬度が高いお陰だろう。 脳は揺さぶられただろうが、判断力を失う程ではなかったようだ。足に纏った風で上空で上手く姿勢を制御する。 シンスが追撃する。一年生は上手くその場から逃げ、背後から強襲しようとする。 ――この試合、一見シンスの属性強化と一年の属性強化、パワーとスピードの勝負に見えるが、実際は……。 炎の帯を腕から脚へ。足裏で爆発させ、更に上空へ。体を半回転させ、再度爆発。直後に腕に炎の帯が移動して、一年生を防御の上から強打する。 ――テクニック、魔力コントロールの勝負だ。 ステージに勢いよく叩きつけられた一年生は、それでも弱々しくはありながらも体を起こす。 「く、そがっ……!」 「お前じゃ勝てねえよ。経験が違いすぎる」 一年生の眼前に降り立ったシンスが宣言した。 実際その通りだろう。経験があれば、速度についていけていないなどと勘違いはしなかった。経験があれば、安易に背後から攻撃すれば倒せるなどと勘違いはしなかった。 勿論自力の差はある。だが、なによりモノを言うのは経験の差だ。
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