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14:18 ――居住区 志乃の家―― 築三年二階建て、庭とガレージ付き木造一軒家。 志乃の実家は、そんな感じのありふれた家であった。 同じ通り沿いには、彼女の家と似たようなそれが、無数に建てられている。 「ふんふんふーん、ただいま。」 鼻歌を歌いながら、志乃は自宅の玄関の扉を開けた。 両手には、重たい買い物袋を二つずつぶら下げているが、本人は余裕の表情である。 「おーう、よう帰った。早く昼ご飯作っとくれー。」 絨毯にゴロゴロと寝そべり、右手を軽くあげて返事をするのは、志乃の姉の御代(みよ)である。 「もう、姉さんも寝転がってばかりいないで、買い物を片付けるのを手伝ってちょうだい。」 「何処になにがあるか分からなくなるのと、今苦労するのと、どっちがいい?」 あまりの怠惰っぷりに志乃は苦情をつけるが、そんな事を言い、軽く受け流される。 「……自分でやるわ。」 志乃も困り、ついこういった返事をしてしまう。 「よく働く妹を持って、あたしは幸せ者だよ。」 葛切家名物の、定番のやり取りである。 そうしている内に、奥の部屋から母親が顔を出した。 「あら、帰ってたのね。私も手伝うわ。」 ぐうたらな姉とは、大違いの母親である。 雑なお父さんに似たのかな、と志乃が思っていると、母が突然何かを探し始めた。 「ねえ志乃ちゃん、お米は?」 「あー……。」 パン屋で庄と値段の話をしたにも関わらず、すっかり買い忘れてしまっていた。 そそっかしい彼女だが、この事からも分かる通り、その度合いはかなりのものである。 「お米無しじゃ、ダメ?」 「駄目に決まっているでしょう。」 期待もせずに聞いてみるが、返答は予想通りであった。 「そ、そうよね……仕方ない、また買いに行くわ。」 葛切志乃、本日二回目の外出である。
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