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――市内 中央部――
居住区の真ん中、即ち正真正銘の市の中心である、日昇市市役所。
この周囲にだけは、警察署や消防署などの治安に関する建物や、レストランなどの飲食店が軒を連ねている。
市民の間では、お洒落な店のある地域として認識されており、主婦がランチに訪れたりする場所だ。
そんな中央部にある市役所のすぐ近く、大通りを挟んで対面に建つ高級ホテルに、攻撃部隊の拠点が置かれていた。
電灯が消され、窓にはカーテンがかかり、あたかも空き部屋であるかの様に偽装されている。
今は、日昇市全体の地図が広げられた大机をメンバーの全員が囲んで、報告会議が行われていた。
「爆弾部隊の準備は?」
地図を見ながら、リーダー格である長身の男が、隣に立つ痩せこけた男に言った。
彼らが計画しているのは、現地の人間を拉致して催眠・洗脳した上で、爆弾を持たせて特攻させるというものだ。
標的は勿論、市内全ての機能を管理している中央市役所である。
「三名に関しては、催眠洗脳の最終段階まで完了しています。残りも今日中には。」
「早さは求めないから、慎重にやれ。途中で心変わりされるのが一番困る。」
「了解致しました。また追ってご報告を。」
それだけ言うと細身の男は、もう自分の用は済んだ、とばかりにさっさと退室してしまった。
それを見た短髪の女が、リーダーの男に詰め寄る。
「ここまで、貴方は何も話してくれませんでした。あんな洗脳を使ってまで、この町を攻める価値があるとも思えません。そろそろ我々にも教えて頂けませんか?どうしてここが標的なのかを。」
丁寧な口調とは裏腹に、彼女の放った言葉には、強い剣幕と憤慨が込められていた。
他のメンバーが戦々恐々とする中で、男はしばらく考えてから口を開く。
「騎士はどうして、馬に乗らなくなってからも騎士と名乗ったと思う?」
予想していなかった例え話に、一同は呆然となった。
それでも、最初に我に返った女が返答する。
「それは…役職の名前だからでしょう。」
「まあ、確かにそうだがね。」
若干呆れながらも、男は言葉を続ける。
「それだけではなく、騎士という職に名誉を感じ、誇りに思っていたからだよ。」
答えが分かっても、それが指す意味が分かる者は、一人として居なかった。
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