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17:25
――日昇市市役所――
太陽が傾き、空一面が薄赤く染まって、合間に浮かぶ雲がなんともいえぬ寂しさを演出する頃。
ようやく、市役所の流通管理課の男が待ちわびた客がやってきた。
「あー、ここに三田良って人はいないか?」
突然オフィスに入ってきた女が、唯一残っていた庄に尋ねた。
流通管理課は全員で8人という少人数のため、たまに部署から人が一気に減ったりする。
庄はすぐに、彼女が三田良の言った客であると理解することができた。
「すみません、彼女は所用で出かけています。手紙を預かっているので、どうぞ。」
事前に渡された、ピンク色でやけに可愛らしい便箋を手渡す。
恋文を渡す姿のようだ、と庄はうっかり考えてしまい、やや紅潮してしまった。
「うわ、何だよこの便箋。こういうの苦手なんだよな…。」
女は苦笑いをしながら、手紙をポケットに突っ込み、帰ろうとして振り返った。
しかし、あまりにもその動作が淡白であったため、庄に僅かな違和感を与えてしまう。
「あ、あの、三田良さんとはどういったご関係ですか?」
いきなり予想していなかった質問をされ、女は動揺してしまった。
そしてそれは、数十秒間の沈黙として現れる。
(何か、何か隠してるな…。しかし、僕に知られてはまずい事って一体?)
(くそ、どうしてそんな事聞くんだよ。仕方ない、適当に合わせておくしかないか。)
そして、ようやく出た適当な切り返しは。
「だ、大事な人だ!」
「…は?」
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