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20:41 ――日昇市 中央区 市役所前高級ホテル―― 庄から手紙を受け取った女は、宿泊先として指定されたホテルの自室で、内容の確認をしていた。 部屋は十七階の南西向き、商業区が遠目に一望できる、好条件の一室。 そんな部屋の、壁一面の窓に向けた椅子に座る彼女、八橋 香(やつはし かおり)は、自衛隊情報部所属の士官である。 こうして彼女らが行動している原因は、1週間程前に情報部が入手した、ある情報に他ならない。 それは、ここ日昇市に対しての無差別爆破テロを遂行する、という恐るべき犯行予告だ。 予定では五日後、警備のために自衛隊陸上隊の一個中隊が派遣されてくる。 しかし、情報部総長即ち香の上司の憂路 蓬は、三日後に控えた市民祭でテロが起こると判断した。 その備えとして、香を独自に送り込んだのである。 窓近くの椅子に座った香は、封印のため貼られた女々しいシールを、苦笑いで剥がす。 封筒の中からは、日昇市中央区の簡略な地図と、当日の警備態勢のシフト表、そしてメッセージの書かれたB5程度の紙が出てきた。
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