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「つ、ついにこの日が来てしまった…」
その日、私は朝からガッチガチに緊張していた。模試のときと同じに早寝早起きで、起きてから復習もして、温かいココアを飲んでリラックスもしたのに…複雑に絡んだ緊張の糸は一向に解れてはくれない。バクバクとうるさい心臓に落ち着け、落ち着け…とほとんど祈るようにしながら、私は家を出た。
受験会場である聖法学園高等部には、一度下見に行った。ヨーロッパの宮殿のように広くて荘厳な校舎だったのを覚えている。下見に行ったときと同じに、電車で二駅、駅からバスに乗り継ぎ、ついに到着。道中、私は北澤がクラスの全員に買ってきてくれた合格祈願のお守りを握り締め、ひかるが送ってくれた頑張れメールをずっと見ていた。それでも、心臓は落ち着く気配を見せない。私はだんだん焦ってきた。
(こんなんじゃダメだ…!気持ちで負けちゃダメ…!一度深呼吸してみよう、そうすれば落ち着けるはず…)
目を閉じて息を大きく吸い込み、深く吐く。深く、深く…よし!!気合いを入れてグッと拳を握り、目を開く。と、そこにはおよそ信じられない光景が広がっていた。
「フレイム・トルネード!!」
「ウォーター・キャノン!!」
「ブリザード・ブレス!!」
「ライトニング・ハンマー!!」
「こらこら~、ウォーミングアップでそんな大技使って、本番までに魔力使い切るなよー」
………これは…一体………?
ヨロヨロと後退りする私。いや待て、これは夢かもしれない。何大事な試験の日に寝ぼけてるんだ!!そう思い、頬を強くつねってみる。い、痛い…。これは一体どういうこと?!ひかるも今日は試験だし、北澤の連絡先は分からない…。両親ももう仕事に出掛けている…。誰か、誰でもいいから、私にこの状況を説明して――!!
「お前、受験生?」
ふと声を掛けられて顔を上げる。そこには――
「サッサと受付済ませてウォーミングアップしとけよ。時間な…ぐぇっ!!!」
「真壁せんぱーい!!!先輩先輩先輩先輩せんぱーい!!!!!」
やっと会えた!!しかもこんなピンチの時に!!やっぱり先輩は私のヒーローだわ!!感極まって思いっ切り抱き着く。恥ずかしいよりホッとする気持ちの方が大きくて、私の目にはじんわり涙が浮かんできた。
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