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「この学校には真壁豊はいないよ」
…は…?どういうこと…?
「え、え?先輩、何言ってるんですか?だって現に先輩はここにいるじゃないですかぁ☆」
「兄貴がいるのはここ『聖法学園』じゃなく、『清鳳学院』。ここにいる俺は、弟の臣。理解した?」
………はぁぁぁ?!?!
「えっ、ちょっ、どういうことですか?!兄とか弟とかさっきから意味わかんない!!『清鳳学院』?!何それどういうこと?!さっきから火やら水やら雪やら雷やらはドンパチやってるし!!一体ここは何なんですか?!?!」
混乱してしまい、一息でそれだけ言うと、私はゼェゼェと息を吐いた。そんな私の様子を見て、真壁先輩…の弟とかいう人は呆れたように溜息をつく。
「お前、ここがどういう学校かも知らずに来たわけ?!」
「真壁先輩がいる学校でしょ?!」
「アホかぁぁぁっ!!!」
スパーン!!と、思いっ切り頭を叩かれる。い、痛い…!!真壁先輩はこんなことしない…!!
「ホントに…先輩じゃないの…?」
「だからさっきから何度も言ってるだろ!!第一、俺はお前と同い年だ!!学生手帳見るか?!」
そう言って彼は学生手帳を見せてくれる。真壁臣。確かに、生まれ年は私と同じだった。よく見れば、写真の瞳の色は黒い。先輩の茶色い瞳とは違う。そして何より、手帳には家族で撮ったらしい写真が挟んであり、そこには彼とよく似た、私の大好きなあの茶色い瞳を持つ先輩が、優しい微笑を浮かべて、今ここにいる彼と並んで立っていた。
「俺はここに中等部から通ってんだ。だから今日は試験の手伝いに来てんの。いい加減分かった?」
「うん…」
「ならサッサと受付してこいよ。案内してやるから」
「…ねぇ君、ちょっと聞いてもいい?」
「臣でいいよ。何?」
「じゃあ、臣。ねぇ、英語の試験は何時間目?!」
「んなもんねぇよ!!」
また頭をスパーン!!と叩かれる。だって、色々あって混乱して、せっかく復習した頻出英単語が頭の色んなところから漏れ出ていっちゃって…!!…って、え?
「英語の試験、ないの…?」
泣き出しそうな私に、臣はまた呆れ顔で溜息をつく。
「お前、まだ何も分かってないみたいだなぁ。」
「どういうこと?」
すると、臣は自慢げに話し始めた。
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