熱くなれ

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「お前まさか…無意識であの看板から身を守ったのか?!」 「え?看板って、去年の…?」 「ああ。兄貴が言うには、看板が当たる寸前、お前は凄まじい魔力を発揮して、看板の下敷きになるのを防いだらしい。無意識でそんな芸当が出来るとなると…」  そこまで言うと、臣は何かを思い付いたのかニヤリと不敵に笑うと、急に私の手を取って、受付に向かって走り出した。 * * * * * (も~!!臣の奴、何の説明もなしに人のことほっぽりだして、どういうつもりよ…!!)  受験生控室で自分の番を待ちながら、私は心の中で目一杯臣への悪態をついていた。  結局私は臣に受付へと連れて行かれ、訳も分からないまま控室で待つように言われ、今こうして知り合いもいない中、一人ポツンと頻出英単語集を読んでいる。 (こんなの読んでてもしょうがないんだけど――)  チラリと周りの様子を窺うと、黒い三角帽を被り魔女のような出で立ちをしている人、水晶球に向かって何かブツブツと呟いている人、ベストセラーになったファンタジー小説を読みながらニヤニヤしている人、ステッキを振り回しながら奇声を上げている人、黒猫に話し掛けている人など…様々な人がいる。随分イロモノ揃いではあったが、こんな中英単語集を開いている自分こそ、彼らにとっては異質なのだろう。そう思うと、なんとなくページをめくる指が早くなった。  パタリと英単語集を閉じ、初めに受付で配られた試験についての説明書に目を落とす。 (試験は面接試問のみ、かぁ…。面接対策はしてあるけど、何か魔法をやってみろ、とか言われたらどうしよう…)  一般受験は魔力を持たない人や魔力を持っていても使えない人が受けると臣は言っていたから、その通りならいきなりやってみろ、はないかな…とは思いつつも、説明書を読んだところで不安は募るばかり…。私は深い溜息をついた。  ガラッ  急に控室のドアが開き、私を含める待っていた人達はビクッと肩を強張らせる。そこにはさっき意気揚々とここを出ていった魔女っ娘コスプレをした受験生が、ガックリと肩を落として佇んでいた。一体何があったらあんな風になれるんだろうと思う程、生気の失せた顔をしている。それは否が応にも私の不安を更に煽った。
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