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「おいおい、何やってくれちゃってんだよ…」
面接官である玲菜に盾突いた愛流の様子を、さっきの動くペンに更に魔法をかけて作り出した簡易魔遠望鏡で眺めていた臣は、深々と溜息をついてひとりごちた。
(しっかし上之宮も、あんなこと考えてただなんてなぁ…)
臣は少等部から学園に入ったのだが、いつも幼等部からの同期の取り巻きを引き連れてつんけんしている玲菜の態度には、正直疑問を持っていた。玲菜とは何回か同じクラスになったこともあるが、口をきいたことなど皆無だ。それが「幼等部からこの学園に通うエリート」思想から来るものだと分かった途端、この学園の生徒だというだけで慢心し、愛流に自分はエリートだと吹聴していたのが恥ずかしく思えてきた。
何も知らずに試験を受けに来て、訳の分からないことだらけで心細いだろうに…今は必死にこの学園に入ってみせようとしている愛流の姿を見て、臣の胸に熱いものが込み上げてくる。正直、初めは「憧れの先輩を追って高校を選ぶなんて、ふざけた奴だ」と思っていたのだが、今は純粋に、そのひたむきさを眩しく思う自分がいた。
(愛流…頑張れよ。上之宮の高ぇ鼻、へし折ってやれ!!)
心の中で愛流にエールを送る。魔遠望鏡の向こうでは、女同士の熱い戦いが始まろうとしていた。
* * * * *
「じゃあまずは、普段の一般受験の手順通りにやってもらいますわ」
そう言うと、玲菜は懐からトランプぐらいの大きさの白いカードを1枚、取り出した。
「このカードは魔力を持つ者が触れると赤く染まりますの。去年までの生温い試験だとピンクに染まれば及第点でしたけれど、貴女はこの私に喧嘩を売った身…真っ赤に染めてご覧なさいませ!!」
居丈高にそう言ってのける玲菜を苦々しく見つめながら、私は不安に駆られていた。大見栄を切ってしまった以上、逃げるわけにはいかないが…このカードを真っ赤に染められるほどの力量は私に備わっているのだろうか。
「あらぁ?触れないんですの?あんな偉そうなことを言った割には、意外と肝が小さいんですのねぇ!!」
高笑いをしながら挑発的な言葉を投げ掛けてくる玲菜に、私の中で色んなものが吹っ切れた。えぇい、ダメでもともと!触ってやるわよ!!
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