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「な…っ!ヘル・アイシクルを防ぐなんて…!!」
目の前で起きた出来事に怯む玲菜であったが、私にとっては危機的状況に変わりない。玲菜は既に次の魔法を繰り出そうとしているのに対し、私は使える魔法もなく全くの丸腰なのだ。出来るのは魔力を使った防御のみ。それもいつまで保つか分からない。
かくなる上は、殴ってでも玲菜を止めなくてはならない。私はそれまで魔力が保つことを祈りながら、10メートル程離れて立つ玲菜に向かって、歩を進めた。
「くっ…!!これならどうですのっ?!スノー・ガトリング!!」
玲菜の一斉に放った雪の弾丸を右手一閃でかわすと、私は更に玲菜に歩み寄る。自分の魔法が全く効を成さないのを目の当たりにして、もはや玲菜の足は竦んでいた。
「こうなったら…っ!!」
それでも懲りずに玲菜は呪文を唱える。すると、今度は玲菜の腕が氷で覆われていった。それは氷柱のように鋭い尖端を形作り、一突きで全てを射抜きそうな様相を呈している。それを見て、私の背には冷や汗が伝った。さっき雪の弾丸をかわした後から動悸が激しくなってきている。あまり考えたくないが、魔力が残り少ないのかもしれない…。こんな状態で、次の攻撃がかわせるだろうか…?!
「この手は使いたくなかったのですけれど…これで終わりですわ!アイシクル・ランジュ!!」
呪文の詠唱が終わると、玲菜は力強く地を蹴り、もうあと4~5メートルの位置まで近付いてきていた私へ向かって全力疾走してきた。このままではヤバい…!!!
さっきまでの魔力の奔流は何処へやら、私はただ立ち竦んで、玲菜の氷に変成した腕の先を見つめていた。間合い一杯近付いた玲菜が腕を引き、渾身の力でそれを突き出してくる。全てがスローモーションに見えた。私は最期を覚悟して、目を閉じ、空を仰いだ――。
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