14人が本棚に入れています
本棚に追加
(それにしても、よく無事だったなぁ…)
思い返してみれば、あの時、看板はもうすぐそこまで迫っていたような気がする。それなのに、私にはかすり傷一つなかった。咄嗟に避けたのか、真壁先輩が助けてくれたのか…。
(咄嗟にあれを避けられるほどあたし運動神経よくないし…きっと真壁先輩が助けてくれたのよ、うん!!だって目が覚めたらすぐそこにいたし、そうに違いない!!ぃやーん!真壁先輩、やっぱり素敵!!)
ベッドに横になり一人でキャァキャァ盛り上がっていると、唐突に保健室のドアがガラッと開いて、クラスメイトの曽根川ひかるが顔を覗かせた。
「なんだ、思ったよりも元気だね。でも大丈夫だった?看板が落ちて来たんでしょ?着ぐるみはあたしが代わるから、愛流ちゃんはゆっくり休んでていいよ」
「うん、ありがと」
真壁先輩が戻って来なかったことに少しガッカリしながら、脱いだ着ぐるみをひかるに渡す。着替え終わったひかるは妙に楽しそうにしながら手を降って保健室を出て行った。
また一人になった私は、未だにドキドキしている胸にそっと手を当てる。なんだか胸の奥が熱くなっている気がした。
(これが…恋ってやつ?)
体育館からは軽音部のバンド演奏の音が聞こえてくる。何年か前に一世を風靡したラブソング。ギターボーカルが些か調子っぱずれだったが、今の私にはそれすらなんだか優しく耳に馴染んで聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!