パリュール

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 コンビニの行列に思いのほか時間を奪われ、せっかくの余裕がなくなってしまった。いつもより早く出たというのに、これではやるせない。  仕方ないので、去年卒業した先輩から教わった秘密の近道を行くことにした。  たぶんこの道を知ってる生徒は俺を入れても片手で数えられるくらいしかいないだろう。  この道は清城女子高のすぐ近くを通る。この道は遠回りだと思われてるし、かなり入り組んでるから、清城の生徒でも完璧に把握している人はいないだろう。  俺も把握しているわけではないが、近道とその周辺だけなら知っていた。  のんびりと近道を歩く。今の時間を考えれば、遅刻はないだろう。  その時、道になにかが落ちていることに気付いた。小さいものだが、きらきら光ってるから嫌でも目に付く。  俺は近づき、そのなにかを拾い上げた。  指輪だった。特に特徴のない、シンプルな指輪。こんなところに落としものとは珍しい。  試しにつけてみた。サイズはぴったり。  ん? なんか体が軽くなったような……気のせいか。  あとで交番に届けるか。今は時間がないから仕方ない。今日の学校帰りでも問題ないだろう。  俺はそのまま指輪をつけたまま歩きだした。
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