パリュール

　
　さて、いきなりだが一つ聞きたいことがある。高校生の不幸って何だと思う？

　忘れ物？　テストで赤点？　彼女に振られる？　全て挙げればそれだけで高校生活が終わる量だが、最大の不幸だけなら数分で終わるだろう。

　人によって価値観は違うからなにが最大の不幸かを決めるのは難しい、というかできない。だから俺の価値観で最大の不幸を一つ挙げよう。

　それは登校中にナイフを突きつけられることだ。

　何故いきなりこんなことを聞いたのかだって？　できれば察してくれると助かるんだが……説明しよう。

　たった今、現在進行形でその最大の不幸を体験中だからです。

「あなた、パリュールは何？」

　俺にナイフを突きつけてる不審者は、いきなりこう言った。パリュールって何だ？　外国のブランドの名前か？

　いきなりナイフを突きつけてきた不審者を見つめる。今更気付いたが、なんと相手は清城の生徒じゃないか。

　モデルのような体型と美貌。研ぎ澄まされた鋭い眼光。こんな美人が清城にいたのかと心の中で驚いた。

　だが、例え相手が美人でもナイフを突きつけられてるこの状況は一切好転しない。

　いや、一部のМの方なら狂喜乱舞するかも知れないが、あいにく俺はМではない。

　とりあえず両手を挙げ、抵抗する意思がないことを示す。すると、目の前の女子はナイフを降ろした。