プロローグ

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   記憶の澄みにある記憶なのか、目の前の記憶なのかデジャウ゛のような感覚の中、病院のベッドの横に佇む俺。  ベッドの上には、赤ん坊を抱いた女性がいて赤ん坊は、今にも泣き出しそうな雰囲気だ。  それを覗き込む俺。  そして、病室の入り口辺りで一眼レフのカメラを構えるのは、俺の父親だった。  また、古いカメラだな。 「ほら、もっと近くに寄れ」  つっけんどんな物言いで、親父は右手のアクションを加えながら、ファインダーを覗いている。  何となく体を寄せると、親父はセルフタイマーをセットして、シャッターボタンを押してベッドに駆け寄る。  そして、ベッドに軽く腰掛けた。 「ほら、カメラの方を向いて」  親父の言葉を合図にするように、カメラのシャッターが切れた。  その音に、赤ん坊が泣き出した。
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