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親父にしてみたら口にはしないが、予定外の事だっただろう。
まぁ、半年前に引っ越してきたから大掃除と言っても、大して大掃除感が無いのは俺としては助かっている。
換気扇も、程なくして綺麗になった。
「親父は、どうしてるかな」
掃除機や、物を片付ける音がしない。
まさか、サボってたりしないよな。
「親父、まだ終わらねえのか?」
ノックもしないで、親父の部屋のドアを開いて中に入った。
そこには、信じられない光景が広がっていた。
「あっ……」
「あっ、じゃねえよ。大掃除してんのに、やる前より汚くなるってどういう事だよ」
「あぁ、これに手を出したら、つい……」
カメラやレンズ、フィルムやフィルムケース。カメラバッグに、頭の写真がぶちまけたように床に広がっている。
カメラは、親父の唯一の趣味だ。
寡黙で余計な事を言わない親父は、休みになるとカメラを抱えて出掛けて行った。
何を、撮りに行ってるかは知らないが。
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