第一章 『物は言い様』

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「飯時は別だ、あと資源は大切にしろ資源は。人と違って簡単には産みだせねぇんだからな」 「……何かおかしくないかしら」 「何もおかしくねぇ」  そう言ってリョウは食事を開始する。握られたスプーンも勇ましく、黄色い山を崩して赤い地肌をかきだした。 「・・・・・・食事の時ぐらい、グローブを外せば良いのに」 「面倒くさい。手づかみ鷲づかみん時は外すがさ」  聞く耳持たず、といった様子でリョウはスプーンを皿と口の間で往復させ始める。そんな姿を見つめるマスターの口が開き、狙い済ましたようなタイミングで仕事の話が始まる。 「今回の依頼はちょっとアレなんだけどね……受ける?」  食事時に依頼の話がある場合、リョウは聞き役に徹することが多い。質問が多くなれば食事が中断されるし、それならば最後まで聞いてから纏めて質問した方が効率が良い。  それはつまりマスター一人が喋らなければならないということだが。 「沈黙は肯定と受け取っておくけど――」  だからといってマスターもやらなければならないことがあるので、勝手なことを言いながら話を続ける。 「今回の依頼は、“護衛”」
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