ただ君を…

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********** 皆敵のように冷たい目線を浴びせてきていた京の人達 その人達も… 昼の日の光を背に浴びつつ道を堂々と歩く僕達を何時もと違う目線で見てきていた 見とれているような… 尊敬しているような… 驚いているような… 僕は… 一回はまた倒れたけど 運ばれるなんてカッコ悪いしそのまま歩いたら日与が… 大丈夫ですか? マスクどうしたんです? 何て感動をぶち壊すように僕に話しかけてきて… 迷惑だ何て言ってあしらったけど、少し嬉しかった 平助も永倉さんも怪我をした 命を落とした者も… いた 変わらない日常何てものは僕達には存在しない でも… 変わらないもの 戻ってきたものも確かにある 「マスクしてなかったって聞きましたよ隊長!! どういうつもりなんです!?」 僕の母親気分なのか何なのか… 屯所に帰って誰か無駄な知識を入れ込んだらしく 相変わらず五月蝿い 「あんな微妙なもの元々着けたくなかったよ」 それにあれは… 君が、僕が病気にならないようにって渡してくれた物だから 君の安否が分からないのに着ける気にもならないよ 「…ぐっ!! でもでも戻ってきた訳ですし、着けてくださいね!!」 「ま、君のボコボコになる頑張りを感じれたら… 考えてあげるよ」 「ぼ、ボコボコになるのを頑張れと!?殺す気か!!?」 「…今、何て?」 「いえいえこの日与夫隊長の為ならボコボコでも ボロボロにでもなります」 そんな… 懐かしい会話 本当はもっと話したい 長州で何かされなかったのかとかも聞きたいけど 今はまだ少しだけ眠い それに、この時を消してしまいたくなかった 彼女は… 目が覚めた時、僕の世話を焼いてくれるだろうか? ここにいるだろうか? 「…僕は寝るけど…」 「あ、すみません!! じゃあ起きた時に食べれるものを作っておきますね」 「美味しくなかったら、そのまま捨てるからね」 「ええっ!!」 きっと… 日与は美味しい料理を作って待っていてくれる 君は本当に単純な子だよ 僕の為…他人の為にその手を汚そうとするなんて 君らしいけど、僕は嫌だ 「隊長、お休みなさい」 静かで優しい声 どうか… どうかそのままでいてほしい 馬鹿でアホで 何時も誰かの為に走る 振り回されるのは嫌だけど、日与にだったら構わない だって僕は、ただ… そんな君の事が 好きなんだから ―完―
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