満開の梅に勝るものなし

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********** 雨の…音が聞こえる 今から起こるであろうことを予期するかのように、幾千もの水の粒は大地に強く…激しく打ち付けられ、その形を無くした 大雨か… 土方は一人部屋の中で刀の手入れをしていた ふと、小さなため息が出て机の上に置いてある句集を見る 日与達が行う作戦とやらの内容も日も土方は知っていたため、あえて少し邪魔をしに行ったのだ 死人と仲を深めたところで悲しみしか生まない そう土方は考えた だが…斎藤に句集が沖田に音読されてます などと言われて、つい屯所に戻ってしまったのだ 情けない… そう思うと同時に斎藤が嘘を付くなんて…と、土方は不安を抱いていた 斎藤が間違った事をする人間でないことは知っているが、いささか日与に肩入れし過ぎだと土方は感じていた まぁ…総司もだがな… そんな事を考えながら、刀を鞘に収めた時… ドタドタドタと誰かがこっちに走ってくる音が聞こえてきたのだ 「歳ーーー!!!」 「こ、近藤さん…!?」 声とほぼ同時に開く障子 そこには血相を変えた近藤が立っていた 「ど、どうしたんだ!?」 その近藤の表情に流石の土方も動揺する 土方の前にドンと腰を下ろした近藤は、取り乱すなよと小さく呟いた 「…芹沢さんと日与が今日祝言を上げるそうだ…」 「………しゅ、祝言!!?」 「あぁ、しかも場所はこの前川邸でだ。どうする…歳」 祝言=結婚だ なんで今さら…しかもあいつと結婚なんだよ 土方はチッと舌打ちをした 芹沢暗殺日を今日にしたのは今日で作戦とやらが終わるからだった そうすれば芹沢も八木邸に戻るだろうし、少しは満足して逝けるだろうと考えていたのだ それなのに…結婚? 土方は勢い良く立ち上がる 「と、歳!?」 「祝言なんてやらせねぇぞ!!」 やったら最後… あの餓鬼のことだ、一生その命を背負うなんて言って自分の人生すら潰しかねねぇ それに…総司やべぇ… 土方は眉間のシワを深めながら、廊下へと足を進めた
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