はじまり

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拍手喝采。 スタンディングオベーション。 鳴り止まない歓声。 ここは、歌手なら一度は憧れる日本武道館。 その会場を埋め尽くす溢れんばかりの観客たち。 そしてその先には、マイクを片手に歌い続ける三人組がいた。 日本国内で、知らない人はいない……とまではいかないが、現在、日本のトップアイドルとえるBRAND-NEW-WINDのメンバーである。 小柄で可愛らしい少年に、長身の常に笑顔を貼り付けた青年。 そして中央には、二人の背のちょうど中間辺り、優しく微笑みながら歌を紡ぐ青年がいた。 どうやら歌い終わったようで、両端の二人は客席へと笑顔で大きく手を振っている。 真ん中の青年は緊張とは違うようだが、どこか表情は硬く、小さく手を振っているだけだった。 それでも会場は割れんばかりの歓声。 すでに何を言っているかさえ分からない叫び声が響き渡っていた。 長身の青年や小柄な少年は、何やら話しているが、真ん中の青年はとくに何も言わず、二人の話の聞き役に回っていた。 そして本日最後の曲のイントロが流れ始める。 周りからはまた何かを叫ぶ声。 一人ずつ何かをマイク越しに叫び、それへと返事するように叫ぶ周りの声。 そして最後、先ほどから余り言葉を発しなかった青年の番となった。 『あっ、と……何を話せばいいか、まったく考えてなかった……』 頭を掻き、すまなそうに話す青年へ、また聞こえる観客の叫び。 『だけど……まあ……次で最後だから……楽しんで欲しい!』 どこか照れたように、語尾を強めて話された言葉。 そして歌が始まる。 スローな曲調に、会場が酔いしれていった。  
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