『溶けゆく雪と』

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      ◆  今は自分の家の自分の部屋。夜さえ眠る遅い時間。夜中の3時だ。  結局、僕はなすがままに彼女からチョコを買って貰った。  せっかくならば、彼女曰く存在するという「義理チョコ制度」なるものでチロルチョコとか、そういうつまらない物なら話のネタにもなったのに。 ――はいっどうぞ!  なぁんて屈託の無い笑顔で、本格的なチョコ渡してくるものだから全く恐れ入る。  お陰様で家の人には「自分で買ったのか」等といびられたり、今は緊張して夜も眠れないはでどうしようも無い。  そういえば、こういう場合はホワイトデイなる日に御返ししなくてはならないのか……誰が決めた日かは知らないが。  そういえば緊張したままで、中身を全く確認していなかった。  思い立ち箱を開けて見てみれば……少し笑いが漏れた。  中身はホワイトチョコレートだった。  ホワイトバレンタインの名に負けない真っ白なチョコレートには、これまた真っ白なパウダーが少しだけ振り掛けてあり、口溶けがよさそうだ。今夜に積もった、やわらかい牡丹雪を思いださせる。 「えっと……すぐに溶けるんだっけか? 牡丹雪は」  空虚に問掛けながら、僕はその雪の様な幾つかの一つを口に運んだのだった。
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