一話

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まだ太陽が完全に顔を出す前の早朝。 静かな海岸線に似つかわしくない光景がそこにはあった。 男が走っている。 ただ男が走っているだけならありふれた光景だが鍛練の一環なんだろうか? その男は体中におもりをつけ常人の全力疾走と変わらぬ速さでかれこれ二時間は走りつづけている。 「おぅ、けんちゃん朝から精がでるね!」 「おはよう!」 魚屋のオヤジと元気よく挨拶を交わすも決してスピードを緩めようとはせず走り抜けていく。 「あらけんちゃんおはよう」 「おっはよう!」 犬の散歩をするおばさんにも挨拶を交わすけんちゃんと呼ばれた男。 どうやらこの犬にも懐かれてるようで壊れてしまったメトロノームのように犬はブンブン尻尾を振ってこの男との再会を喜んでいる。 もちろん男は止まらず走り続けているため毎日会う時間はほんの数秒ほどだがこの男の気質といった所だろうか動物にすぐ懐かれるようだ。
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