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もつことをやめ、つくることすらやめてしまったのに。大切だと思うものは記憶の彼方へと置き去りにしてきたというのに、今更それを取り戻そうとしている今の自分を、過去の自分がまるで嘲笑っているかのように感じた。
歩夢
「おれは………!」
ピーチ
「……大切なものは、必ず守る………!」
さらにきつくなる木にたえながら、ピーチはしぼりだすかのように声をだす。
ピーチ
「そう、言ってくれたから………」
ベリー
「完璧じゃなくても……そうなろうと努力することを、歩夢は教えてくれた……」
ピーチに続き、ベリーも言う。
パッション
「踏み出すための勇気……それを教えてくれたのは歩夢。あなたの方よ………っ」
パイン
「私たちが忘れかけていたものの全てを、あなたは思い出させてくれた…………!」
さらに強まる痛みと苦しみにたえながらも尚、しぼりだす。
パイン
「だから私たち、信じてる……あなたならきっと………勝つって!」
四人の言葉が、再び閉ざしかけていた歩夢の心に突き刺さる。
まだ、間に合う。踏み出すための瞬間は、いつでもそこにあった。なのにそのことに目をふせ、失敗してしまうことの恐怖に負け、逃げだしてしまっていたんだ。
だが、もう逃げない。一歩踏み出すことを恐れない。そして願わくば、その一歩で変えられるものがあるというのなら―――!
歩夢
「おれ自身を変えるんだ……今、ここで。そうだろ!ラブ、祈里、美希、せつな!」
直後、ドラゴが光りだし色を失ったジュエルが四つその輝きを取り戻す。溢れんばかりの眩い光は照らした木のつるを緩め、プリキュアをその呪術から解放する。
歩夢
「変えられるんだ……踏み出すことができるなら」
確信をもった言葉に、歩夢自身も驚いていた。
全て無駄だと諦めていた自分が、こうも変われるのだ。なら、変えられるかもしれない。自分自身を。世界を。
歩夢
「……いや、変える。変えてみせる」
ノーザ
「おのれェ……貴様、いったいどこにそんな力が!?」
歩夢
「力か……そうかもな」
力というには、あまりにも不安定過ぎる。が、そうでないとも言い切れない。曖昧な考えがもどかしくて苦笑した。
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