テンサイ魔法使い

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  おかしいと思うことなかれ。 すいすいと平泳ぎをする緑色のちっちゃなカエルは正真正銘シルヴィアの父である。 ††††† 「おはよう、父さん」 シルヴィアはいつものようにカエルにそう言った。 丸い金魚鉢の中で、楽しそうに泳いでいるカエルにそう言うのが彼女の日課。 カエルに向かって父だって? おかしいと思うことなかれ。 すいすいと平泳ぎをする緑色のちっちゃなカエルは正真正銘彼女の父である。 とある理由で妖精王に魔法をかけられ、人からカエルになったそうだ。 シルヴィアはパックされた食用コオロギを一匹つまんで金魚鉢の上で振ってやる。 途端に目の色を変えて、カエルは指先が丸い手を必死に伸ばしてくる。 「……食いしん坊」 そんな父で遊んだ後、鉢の中へコオロギをヒョイと入れた。 一瞬の内にカエルは水面に浮かんだコオロギを長い桃色の舌で絡めとる。 むしゃむしゃと頬張る様はなかなかに可愛い。 父というよりはペットだ。
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