震える心

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『カチャン!』 隣のテーブルに座っている5、6才の男の子が皿にフォークを置いた‥。 「ママぁ‥もう食べられないよ‥僕、お腹がいっぱい」 その皿を覗き込むと半分以上は残っているハンバーグがあった。 「あら?もういいの?ちゃんとお腹はいっぱいになったの?」 男の子の向かいに座っている母親が尋ねる。 「うん!!でもアイスが食べたい!!」 男の子はソースで汚れたクチでおねだりをしている。 「いいわよ。どのアイスがいいの?」 母親がメニューを開き、男の子に見せた。 「これがいいな」 男の子は食べたいアイスの写真を指で叩いている。 「すみません‥」 白いワイシャツに黒いベストを着た男性の店員が隣のテーブルに訪れた。 「このアイスをください。それとこれを下げてもらえますか?」 母親は男の子が食べ残した皿を指差した。 店員は軽く会釈をして 「失礼します」 そう言って食べ残しが、たくさんある、その皿を下げていった。 (あの皿の上のハンバーグをあの時、アイツの目の前に置いてやる事が出来てたら‥) オレは・・ 32年前‥ まだオレに『妹』がいた頃を思い出していた。
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