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えらく可愛らしい女の子だった。
垂れた目とか、綺麗な弓を描く眉とか、桜のつぼみみたいな唇とか。淡雪のように白い肌の上に乗っかるパーツから、どことなくのんびりとした印象を受ける。
それだけにその奇妙な恰好が残念だなぁ、とか思っていると、右腕をがっしりと掴まれた。
「へ?」
思わず素っ頓狂な声をあげるひかる。
困惑したまま少女の顔を窺うと、なんか笑っていた。くつくつ、と。込み上げてくる歓喜の気持ちを抑えられない、といった様子で。
さっきまで漂っていた儚げで緩そうな雰囲気はどこかに吹き飛び、餓えた猛獣然とした空気を纏っている。
「メンバー確保ッ!」
「へ? ――きゃぁぁあああああ!!」
なにやら叫んだ触角少女は、とても女子とは思えぬ力でひかるの腕を引き、駆け出した。ひかるの悲鳴は虚しく尾を引いていく。
その一部始終を目撃していたおばちゃんは、これは通報すべきなのかどうか考え、唸り……結果、見なかったことにした。
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