プロローグ

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校庭は、桜が咲きほこり、花吹雪が空を舞っている。  空気は、大空で冬の寒さを春の暖かさで閉じこめ校庭を通り過ぎている。  ユリナは、春の香りを胸一杯吸い、舞う桜を指先で一つ摘まんだ。  今学期は、何も起こらないようにと散る桜に祈った。  生徒数1万人、教職員千人の日本最大の城山学園は、昨年、殺人事件が1件、自殺が2件、自殺未遂が3件、刃傷事件が2件、暴力事件が12件もあった。  警備員も2名から4名に増員された。 「おはよう御座います」 吉祥院ユリナは、笑顔で校門を警備している警備員に挨拶する。 「おはよう!」 防刃ベスト、ヘルメット、特殊警棒を身にまとった警備員から短い硬い返事が返ってくる。 現金輸送車護衛なみの装備をして、ヘルメットの奥の目は、鷹の様に周囲を睨んでいる。 今日から二年生の一学期が始まる。 ユリナは濃紺のブレザーに真っ白なブラウス、深紅のミニタイを締めて、今にもパンティが見えそうなフレアなミニスカートを揺らしながら校舎に向かう。 校舎入り口の右手には、警視庁が異常な犯罪の多さに生徒の安全を守るため異例の交番が設営されている。 中から制服の警官がじっとユリナに視線を向けている。 ユリナは軽く会釈した。 警官はさっと立ち上がり敬礼を返した。
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